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11:00 公開

マルチソース検索の仕組み:ホットペッパー、食べログ、Google——断片化した飲食店データの問題

主要プラットフォーム間のデータ構造の違い、日本の飲食店データエコシステムの分断、そして単一プラットフォームでは完全な情報が得られない理由を解説する。

日本の飲食店データは「島」に分かれている

日本で飲食店を探すとき、多くの人は複数のアプリやウェブサイトを使い分けている。食べログで評価を確認し、ホットペッパーでクーポンを探し、Google Mapsで場所を調べ、公式サイトでメニューを見る——この一連の作業は、一つのプラットフォームでは完結しない。

なぜこのような状況が生まれたのか。日本の飲食店データは、歴史的に複数のプラットフォームに分散して蓄積されてきた。それぞれが独自のデータ構造、カテゴリ体系、評価基準を持っている。統一された「飲食店データベース」は存在しない。

主要プラットフォームの特徴

食べログ(Tabelog)

2005年にサービスを開始した食べログは、日本最大のレストランレビューサイトである。登録店舗数は80万を超え、レビュー数は数千万に達する。特徴は、ユーザーレビューの深さと評価システムの厳格さにある。

食べログのデータは「レビュー中心」の構造を持つ。店舗の基本情報に加えて、詳細なユーザーレビュー、写真、評価点が蓄積されている。カテゴリは非常に細分化されており、「焼き鳥」「串焼き」「鳥料理」など、類似カテゴリが複数存在する。

ホットペッパーグルメ(HotPepper Gourmet)

リクルートが運営するホットペッパーグルメは、予約とクーポンに強みを持つプラットフォームである。登録店舗数は数十万に及び、特に居酒屋やチェーン店の情報が充実している。

ホットペッパーのデータは「予約・販促中心」の構造を持つ。コース料理の詳細、飲み放題プラン、クーポン情報、個室の有無、喫煙可否など、予約時に必要な実用的情報が体系的に整理されている。APIも公開されており、開発者はこのデータにアクセスできる。

Google Maps

Google Mapsは、地図サービスと連動したグローバルなプラットフォームである。日本の飲食店も多数登録されているが、そのデータ構造は他のプラットフォームとは異なる。

Googleのデータは「位置情報中心」の構造を持つ。店舗の所在地、営業時間、混雑状況、アクセス方法などが重視される。レビューは多言語で投稿され、外国人観光客のレビューも多い。ただし、メニューの詳細や予約機能は限定的である。

データフィールドの違い

各プラットフォームが持つ情報は異なる。以下は代表的な違いである。

予算情報について、食べログは「ランチ予算」「ディナー予算」を分けて表示する。ホットペッパーはコース料金を中心に、詳細な価格帯情報を提供する。Google Mapsは「$」記号による大まかな価格帯のみを表示することが多い。

カテゴリ分類について、食べログは「和食」の下に100以上のサブカテゴリを持つ。ホットペッパーは予約時に役立つ切り口(宴会向け、デート向け等)でも分類している。Google Mapsは国際的なカテゴリ体系を使用しており、日本特有の細分化には対応していない。

写真とビジュアル情報について、食べログはユーザー投稿の料理写真が豊富である。ホットペッパーは店舗が提供する公式写真が中心である。Google Mapsは店舗内観や外観の写真が充実している。

なぜデータは統一されないのか

各プラットフォームが異なるデータを持つ理由は、ビジネスモデルの違いにある。

食べログはユーザーの滞在時間とエンゲージメントを重視する。詳細なレビューを読み、写真を見て、じっくり店を選ぶ——そのプロセスで広告収入を得る。だからレビューの深さが重要になる。

ホットペッパーは予約完了を重視する。店舗から予約手数料や掲載料を得るビジネスモデルであるため、予約を促進する情報(クーポン、コース詳細、空席状況)が充実している。

Googleは検索と地図サービスの一環として飲食店情報を提供している。位置情報とユーザーレビューを組み合わせ、検索結果の有用性を高めることが主目的である。

これらのプラットフォームが統合される経済的インセンティブは存在しない。むしろ、差別化のためにデータを囲い込む傾向がある。

APIアクセスの制限

開発者がこれらのデータにアクセスしようとすると、さらなる壁に直面する。

ホットペッパーグルメAPIは比較的オープンであり、無料で利用できる。店舗の基本情報、住所、カテゴリ、写真URLなどを取得できる。ただし、レビュー内容や評価点は提供されていない。

食べログはAPIを公開していない。レビューデータは食べログの競争優位の源泉であり、外部への提供は制限されている。

Google Places APIは有料であり、利用量に応じた課金が発生する。データは豊富だが、日本特有の詳細情報(例:個室の有無、飲み放題の価格)は含まれていないことが多い。

断片化がもたらす問題

この断片化は、ユーザーにとって複数の問題を生む。

第一に、情報収集の手間がかかる。「この店の評判は良いのか」「予約はできるのか」「予算はいくらか」——これらを調べるために、複数のサイトを横断する必要がある。

第二に、情報の不整合が起きる。同じ店でも、プラットフォームによって営業時間や定休日が異なることがある。どれが正しいのか判断できない。

第三に、「完全な全体像」を得ることが難しい。食べログのレビューとホットペッパーのコース情報とGoogle Mapsの位置情報——これらを頭の中で統合して判断する必要がある。

マルチソースアプローチの可能性

この断片化に対応するアプローチとして、複数のデータソースを横断的に活用する方法がある。LocalWaysはこのアプローチを採用している。

異なるプラットフォームから得られる情報を組み合わせることで、単一ソースでは得られない包括的な情報を提供できる。ホットペッパーの詳細な店舗情報、位置情報に基づく検索、そしてユーザーの自然言語クエリの理解——これらを統合することで、より精度の高い店舗提案が可能になる。

完全なデータ統合は技術的にも法的にも難しいが、利用者のニーズを理解し、適切な情報源から情報を引き出すことはできる。それがAIアシスタントの役割である。

編集部注: 本記事は日本の飲食店データエコシステムに関する一般的な解説です。各プラットフォームの仕様やAPI条件は変更される可能性があります。