「Japanese only」は人種差別なのか?——日本語しか話せませんという現場の事情と、その伝え方
飲食店の入口に掲げられた「Japanese only」という表示が、SNSで物議を醸すことがある。その背景にある店側の事情と、国際的な誤解を生みやすい表現の問題について考える。
なぜこの表示が問題になるのか
日本の飲食店で時折見かける「Japanese only」という表示。日本で暮らしている人であれば、これが「スタッフは日本語しか話せません」という意味であることは、なんとなく察しがつくだろう。
しかし、英語圏から来た観光客にとって、この表現は全く別の意味に見える。「Japanese only」は文字通り「日本人のみ」と読める。つまり、「日本人以外の入店はお断り」という人種差別的なメッセージとして受け取られてしまうのだ。
現代のSNS時代、一枚の写真が瞬時に世界中に拡散される。観光客が撮影した「Japanese only」の看板が、「日本で人種差別を受けた」という文脈でTwitterやRedditに投稿され、炎上するケースは少なくない。
店側の本当の事情
では、なぜ店はこのような表示を掲げるのか。多くの場合、その理由は至ってシンプルで、かつ切実なものだ。
まず、言語の壁がある。特に個人経営の小さな店では、英語を話せるスタッフがいないことがほとんどだ。メニューの説明ができない、アレルギー対応の確認ができない、予約のやり取りができない——これらは店にとって非常に大きなリスクとなる。
次に、過去のトラブルの経験がある。英語でのコミュニケーションがうまくいかず、注文の行き違いでクレームになったり、予約のすっぽかしが続いたり、日本の飲食店独自のルール(例えばお通し代、席料、ラストオーダーなど)が伝わらずトラブルになったケースを経験した店主も少なくない。
彼らにとって「Japanese only」の表示は、差別ではなく自己防衛なのだ。「うちは日本語しか対応できないから、それでも良ければどうぞ」という意図が、英語表現のニュアンスの罠にはまってしまっている。
国際的な文脈での「Japanese only」
英語圏、特にアメリカやイギリスでは、人種差別の歴史が深く刻まれている。「Whites only」「No Blacks」といった看板は、かつて公民権運動の時代に実際に存在し、今なお負の遺産として記憶されている。
そのような歴史的文脈を持つ人々が「Japanese only」という表示を見たとき、条件反射的に人種差別を連想するのは、ある意味自然なことだ。彼らにとって「〇〇 only」という表現は、それ自体が強いネガティブな意味合いを持っている。
さらに、日本にはごく一部であるが、実際に外国人の入店を拒否する店が存在することも事実だ。その区別がつかないまま、すべての「Japanese only」表示が同じ括りで批判されてしまうことがある。
より適切な表現への提案
では、店側はどうすれば良いのか。意図が正しく伝わる表現に変えるだけで、誤解の多くは防げる。
例えば、以下のような表現が考えられる。
推奨される表現例
- ○
「スタッフは日本語のみ対応です」
Staff speak Japanese only.
- ○
「英語メニューはございません」
No English menu available.
- ○
「日本語でのご注文をお願いしております」
Please order in Japanese.
避けるべき表現
×「Japanese only」(人種差別と誤解される可能性が高い)
また、言語アイコンやピクトグラムを活用するのも効果的だ。日本語の「あ」マークに斜線を入れて「No English」を示したり、翻訳アプリの使用を促すQRコードを掲示したりする工夫も見られるようになっている。
双方の立場を理解する
この問題には、正解がない側面もある。
店側の立場で言えば、言語対応の限界は現実的な問題であり、それを伝えること自体は差別ではない。ただし、伝え方を間違えると、意図しない形で店のイメージを損ない、日本のホスピタリティ全体の評判にも影響しかねない。
一方、観光客の立場で言えば、見慣れない国で言葉の通じない店に入るのは不安なことだ。その不安に対して「お断り」と受け取れるメッセージを見れば、傷つくのは当然だろう。
重要なのは、どちらが正しいかを争うことではなく、誤解を減らすための工夫を重ねることだ。
LocalWaysとしての役割
LocalWaysは、日本の飲食店と海外からの訪問者の間に立つ「通訳」のような存在でありたいと考えている。
私たちは、店側の事情——言語の壁、予約システムの違い、日本特有のルール——を理解している。同時に、観光客が抱える不安や戸惑い——どこに行けばいいかわからない、英語が通じるか不安、歓迎されているのかわからない——も理解している。
AI技術を活用した検索機能では、言語対応の有無やインバウンド対応の程度を考慮しながら、ユーザーに合った選択肢を提示することを目指している。また、記事を通じて、日本の飲食店文化の背景を伝え、相互理解を深める手助けをしたいと思っている。
「Japanese only」という表示一つをとっても、そこには言語・文化・歴史が複雑に絡み合っている。その背景を知ることが、より良い体験への第一歩になるはずだ。
編集部注: 本記事は、日本の飲食店における言語対応表示に関する一般的な情報と考察を提供することを目的としています。個別の店舗の方針や対応については、各店舗にご確認ください。
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