訪日外国人が実際に検索していること——そして日本のプラットフォームがうまく対応できない理由
英語での検索と日本語のレストランデータの間にあるギャップ。キーワード検索と自然言語ニーズの乖離を分析する。
月間300万人の訪日客が直面する壁
2024年3月以降、日本を訪れる外国人観光客は毎月300万人を超えている。この数字は過去最高水準であり、日本の観光産業にとって大きな機会である。しかし同時に、言語と情報アクセスに関する課題も浮き彫りになっている。
調査によると、訪日観光客の約22%が「ホテル、レストラン、施設のスタッフとのコミュニケーションが難しかった」と回答している。この数字は、単なる言語能力の問題ではなく、情報システム全体の設計に関わる課題を示唆している。
外国人観光客の検索パターン
訪日観光客がレストランを探す際の検索パターンには、いくつかの特徴がある。
まず、自然言語での質問形式が多い。「Where can I find authentic ramen near Shinjuku?」「What's a good sushi place that takes credit cards?」——こうした文章形式の検索は、キーワード検索とは異なるアプローチを必要とする。
次に、複合条件を含むことが多い。「予算」「立地」「料理の種類」「支払い方法」「アレルギー対応」——これらを同時に満たす店を探している。単一のキーワードでは、こうしたニーズを表現しきれない。
さらに、文脈依存の要望がある。「子連れでも入りやすい」「デートに適した雰囲気」「一人でも気軽に入れる」——これらは主観的な条件であり、構造化されたデータには含まれていないことが多い。
日本語メタデータとの不一致
問題の核心は、英語での検索と日本語で登録されたレストラン情報との間にある「不一致」である。
例えば、「izakaya」という言葉を考えてみる。外国人観光客にとって、これは「日本式パブ」や「居酒屋スタイルの飲食店」を意味する。しかし、日本のプラットフォームでは「居酒屋」「和食」「創作料理」「焼き鳥」など、さらに細かいカテゴリに分類されている。
「izakaya with good yakitori」と検索しても、日本語のデータベースでは「焼き鳥専門店」と「居酒屋」が別カテゴリになっている場合がある。この概念的な不一致が、検索精度を下げている。
また、日本特有の料理名も障壁となる。「おばんざい」「もつ鍋」「ちゃんこ」——これらは英語に直接対応する言葉がなく、説明的な検索では見つけにくい。
キーワード検索の限界
従来のキーワード検索は、完全一致または部分一致を基本としている。「ramen Shibuya」と検索すれば、「ramen」と「Shibuya」の両方を含む結果が返される。
しかし、自然言語のニーズはこれより複雑である。「I want something light but filling after a long flight」——この要望に対して、キーワード検索は無力である。「light」「filling」「flight」というキーワードは、飲食店データベースには存在しない。
また、否定条件も扱いにくい。「no raw fish」「not too spicy」——これらの条件をキーワード検索で表現することは難しい。日本のプラットフォームでは、アレルギー情報や食事制限の対応状況が体系的に登録されていないことも多い。
プラットフォーム側の対応状況
日本の飲食店プラットフォームも、インバウンド対応を進めている。食べログは英語版を提供しており、ホットペッパーグルメも一部の情報を英語で閲覧できる。Googleマップは多言語での検索に対応している。
しかし、根本的な課題は残っている。英語版があっても、翻訳の質にばらつきがある。自動翻訳では、料理名や店の雰囲気を正確に伝えることが難しい。また、日本語で書かれたレビュー——最も有用な情報源——にアクセスできない。
ある調査では、インバウンド観光客への対応を「予定していない」と回答した飲食店が70%に達した。その最大の理由は「多言語対応の難しさ」であり、約60%の店舗がこれを課題として挙げている。
翻訳アプリの限界
観光客の多くは翻訳アプリを活用している。Google翻訳、DeepL、その他のツール——これらは日常会話には有用である。しかし、飲食店選びにおいては限界がある。
メニューの翻訳はできても、その店が自分のニーズに合っているかどうかは判断できない。レビューを一つ一つ翻訳するのは時間がかかりすぎる。そもそも、どの店を調べるべきかを決める段階で、翻訳アプリは役に立たない。
言語の壁は、単なる「翻訳」の問題ではない。情報の取捨選択、文脈の理解、暗黙の文化的知識——これらが組み合わさって、初めて適切な飲食店選びができる。
求められているのは「翻訳」ではなく「理解」
外国人観光客が本当に必要としているのは、単なる翻訳ではない。自分の好みや状況を理解し、日本の膨大な飲食店情報の中から適切な選択肢を提示してくれる——そうした「理解」のレイヤーである。
LocalWaysは、この課題に取り組んでいる。自然言語での質問を受け付け、利用者の意図を解釈し、日本語のデータベースから適切な店舗を探し出す。キーワードの完全一致ではなく、文脈と意図に基づいた提案を行う。
「静かな場所で、あまり高くなくて、魚介類以外の和食」——こうした複合的な要望に対して、単なるキーワード検索では対応できない。意味を理解し、条件を分解し、適切な選択肢を見つける——それがAIアシスタントの役割である。
編集部注: 本記事で引用した統計データは、日本政府観光局(JNTO)および民間調査機関の公開情報に基づいています。